“自動化は人の仕事を奪うのか?”
そんな問いを聞く機会が増えました。けれど本当の論点は、「人がやるべき仕事は何か?」という“再定義”にあります。
業務構造が複雑化し、マルチチャンネル対応や目視確認に限界が見えはじめた今、
自動化は“削減”ではなく“設計のやり直し”を促すもの。
今回は「人が担うべき役割とは何か」を、判断・創造・責任という軸から紐解いていきます。
【1. なぜ今、“人の仕事”を問い直すのか?】
私たちはいま、「働き方」だけでなく、「働く意味」そのものが問われる時代に生きています。
- 人手不足なのに、人がやらなくてもいい仕事が山のように残っている
- AIやソフトウェアロボットが、人のように“考える”ようになってきている
- 多くの人が、効率よりも「納得感」や「やりがい」を重視するようになってきている
このような変化は、“人がやるべき仕事”とは何かという根源的な問いを浮かび上がらせます。
【2. 業務構造は、すでに“人にとって不向き”なかたちへと変化している】
かつての仕事は、紙・電話・対面といった、比較的直線的な流れで構成されていました。
しかし現在の職場では、次のような問題が日常的に起きています。
■ クラウド化・情報の分散
- BoxやSharePointなど複数の場所にファイルが保存され、確認の手間が増大
- どのデータが最新版か、どこまで進んでいるかが見えにくい
■ マルチチャンネル化による情報の断片化
- Teams、メール、チャット、Zoomなどでやりとりがバラバラに分散
- 対応ミスや伝達漏れのリスクが増加し、仕事が“つながらない”
■ “目視と記憶”に頼る限界
- チェック作業や進捗確認が属人化し、疲弊とミスの温床に
- 「ツール導入=効率化」とは限らず、むしろ煩雑化する例も
こうした構造の中で、「人がすべきでない業務」が明確になってきています。
【3. 自動化が進む時代、役割の再編が求められている】
今、社会全体で行われているのは、「人を省く」ことではありません。
「人が本当に価値を発揮すべき場面はどこか」を見直すことです。
- 定型的な処理
- 数値やデータの転記
- 手順が決まっているルーティンワーク
これらは、むしろ人が手を離すべき領域です。
自動化は、仕事を奪うのではなく、“人の役割”を解き放つもの。
【4. “人がやるべき仕事”とは何か?】
人にしかできない仕事には、次の3つの柱があります:
- 判断:曖昧な情報や文脈をもとに意思決定する
なぜ人が担うべきか:空気や背景、相手の気持ちをくみ取る力があるから - 創造:新しい価値や仕組みを考え出す
なぜ人が担うべきか:まだ存在しないものを構想できるから - 責任:結果に向き合い、説明し、受け止める
なぜ人が担うべきか:道徳や共感に基づいた行動ができるから
これらは単なる能力ではなく、「人として」働くことの本質です。
【5. 機械と人の役割分担を見極める“仕組み化”の視点】
業務を見直すには、「人がやるべきか」「機械で処理すべきか」を明確に分類する必要があります。
- 業務内容:繰り返し作業
特徴:ルールが明確で判断不要
担当すべき主体:ソフトウェアロボット - 業務内容:曖昧な対応・臨機応変な判断
特徴:状況や相手に応じて調整が必要
担当すべき主体:人 - 業務内容:新しい提案・設計
特徴:前例のない課題への構想・解決策づくり
担当すべき主体:人 - 業務内容:対話と責任の所在
特徴:状況や相手に応じて調整が必要
担当すべき主体:人
【6. “働く”の再定義──人として、意味をつくる】
テクノロジーの進化によって、“作業”は次々と自動化されていきます。
その流れの中で、私たちが担うべきは──
「意味をつくること」
「未来に責任を持つこと」
そしてもう一つ。
“環境の変化を感じ取ること”も、人にしかできない大切な役割です。
- 「空気が変わった」と感じる直感
- 顧客や同僚の“言葉に出ない違和感”を察知する感性
- 数字やマニュアルでは捉えきれない、“未来の兆し”を読み取る力
これらは、いかなるAIにも再現できない“人としての働き”です。
自動化は、人の価値を奪うものではありません。
人が“感じて・意味づけ・つないでいく”という本質的な仕事を、より鮮明に浮かび上がらせる存在なのです。
【まとめ|“人がやるべき仕事”とは何か?】
- 業務の構造は、すでに人が担うには複雑すぎる領域が増えています
- 自動化は、その負担を手放し、価値ある仕事に集中するための選択肢です
- 判断・創造・責任、そして“変化を感じ取る力”──これらは「人として」しか担えない役割です
“人がやるべき仕事”とは、意味をつくり、未来を背負うこと。
その仕事を、私たちはこれから再定義していく必要があります。
どこかひとつでも引っかかるところがあれば、ひと言でも残していただけたらうれしいです。
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