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“人がやるべき仕事”をどう定義しなおすか──第2回|業務自動化の真髄

2025.11.10
# Column

“自動化は人の仕事を奪うのか?

そんな問いを聞く機会が増えました。けれど本当の論点は、「人がやるべき仕事は何か?」という“再定義”にあります。

業務構造が複雑化し、マルチチャンネル対応や目視確認に限界が見えはじめた今、
自動化は“削減”ではなく“設計のやり直し”を促すもの。

今回は「人が担うべき役割とは何か」を、判断・創造・責任という軸から紐解いていきます。

【1. なぜ今、“人の仕事”を問い直すのか?】

私たちはいま、「働き方」だけでなく、「働く意味」そのものが問われる時代に生きています。

  ○ 人手不足なのに、人がやらなくてもいい仕事が山のように残っている

  ○ AIやソフトウェアロボットが、**人のように“考える”**ようになってきている

  ○ 多くの人が、効率よりも「納得感」や「やりがい」を重視するようになってきている

このような変化は、“人がやるべき仕事”とは何かという根源的な問いを浮かび上がらせます。

【2. 業務構造は、すでに“人にとって不向き”なかたちへと変化している】

かつての仕事は、紙・電話・対面といった、比較的直線的な流れで構成されていました。
しかし現在の職場では、次のような問題が日常的に起きています。

■ クラウド化・情報の分散

  ○ BoxやSharePointなど複数の場所にファイルが保存され、確認の手間が増大

  ○ どのデータが最新版か、どこまで進んでいるかが見えにくい

■ マルチチャンネル化による情報の断片化

  ○ Teams、メール、チャット、Zoomなどでやりとりがバラバラに分散

  ○ 対応ミスや伝達漏れのリスクが増加し、仕事が“つながらない”

■ “目視と記憶”に頼る限界

  ○ チェック作業や進捗確認が属人化し、疲弊とミスの温床に

  ○ 「ツール導入=効率化」とは限らず、むしろ煩雑化する例も

こうした構造の中で、「人がすべきでない業務」が明確になってきています。

【3. 自動化が進む時代、役割の再編が求められている】

今、社会全体で行われているのは、「人を省く」ことではありません。
「人が本当に価値を発揮すべき場面はどこか」を見直すことです。

  ○ 定型的な処理

  ○ 数値やデータの転記

  ○ 手順が決まっているルーティンワーク

これらは、むしろ人が手を離すべき領域です。
自動化は、仕事を奪うのではなく、“人の役割”を解き放つもの。

【4. “人がやるべき仕事”とは何か?】

人にしかできない仕事には、次の3つの柱があります

  判断 曖昧な情報や文脈をもとに意思決定する
  なぜ人が担うべきか 空気や背景、相手の気持ちをくみ取る力があるから

  創造 新しい価値や仕組みを考え出す
  なぜ人が担うべきか  まだ存在しないものを構想できるから

  責任 結果に向き合い、説明し、受け止める
  なぜ人が担うべきか  道徳や共感に基づいた行動ができるから

これらは単なる能力ではなく、「人として」働くことの本質です。

【5. 機械と人の役割分担を見極める“仕組み化”の視点】

業務を見直すには、「人がやるべきか」「機械で処理すべきか」を明確に分類する必要があります。

  業務内容 :  繰り返し作業
  特  徴 : ルールが明確で判断不要
  担当すべき主体 : ソフトウェアロボット

  業務内容 :  曖昧な対応・臨機応変な判断
  特  徴 : 状況や相手に応じて調整が必要
  担当すべき主体 : 人

  業務内容 :  新しい提案・設計
  特  徴 : 前例のない課題への構想・解決策づくり
  担当すべき主体 : 人

  業務内容 :  対話と責任の所在
  特  徴 : 状況や相手に応じて調整が必要
  担当すべき主体 : 人

【6. “働く”の再定義──人として、意味をつくる】

テクノロジーの進化によって、“作業”は次々と自動化されていきます。
その流れの中で、私たちが担うべきは──

  「意味をつくること」
  「未来に責任を持つこと」

そしてもう一つ。
“環境の変化を感じ取ること”も、人にしかできない大切な役割です。

  ○ 「空気が変わった」と感じる直感

  ○ 顧客や同僚の“言葉に出ない違和感”を察知する感性

  ○ 数字やマニュアルでは捉えきれない、“未来の兆し”を読み取る力

これらは、いかなるAIにも再現できない“人としての働き”です。
自動化は、人の価値を奪うものではありません。
人が“感じて・意味づけ・つないでいく”という本質的な仕事を、より鮮明に浮かび上がらせる存在なのです。


【まとめ|“人がやるべき仕事”とは何か?】

  業務の構造は、すでに人が担うには複雑すぎる領域が増えています

  自動化は、その負担を手放し、価値ある仕事に集中するための選択肢です

  判断・創造・責任、そして“変化を感じ取る力”──これらは「人として」しか担えない役割です


“人がやるべき仕事”とは、意味をつくり、未来を背負うこと。
その仕事を、私たちはこれから再定義していく必要があります。


 

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